愛は貫くためにある
「勉さん…今、何時ですか…?」
麗奈は目をこすり、眠そうにしていた。化粧を落とした素の麗奈もとても美しい、と勉は思った。
「ああ…まだ4時ですよ」
勉はちらりと腕時計を見た。
「4時…朝のですか…?」
「ええ、朝の4時です。早朝ですね」
「お父様は4時に起きていらっしゃるだなんて、初めて知りました。私には無理…」
瞼を閉じようとする麗奈を、勉は揺さぶった。
「ん…勉さん…?」
麗奈は驚いて勉をじっと見た。
「突然揺さぶるような真似をして、申し訳ございません。二度寝をなさるおつもりで?」
「ふふ、は〜い」
麗奈はにこりと笑った。勉は麗奈をこのまま寝かせるのは勿体ないと、麗奈の頬をつまんだ。
「んぐっ」
目を丸くしている麗奈と、勉は目が合った。
「お嬢様、二度寝なさりたいですか?」
「したいです〜」
即答する麗奈に勉は苦笑しつつも、勉は麗奈にあるお願いをした。
「お嬢様。どうしても寝てしまわれるのなら…一つだけお願いがございます。これは僕の欲望で…強制力はございませんが、僕の願いをお聞き届けくださいませんか?」
「わかりました。私に出来ることなら、何でも」
麗奈は快諾した。
勉は、肩にかけていた毛布をがばっと剥ぎ、床に投げ捨てた。普段は見ない乱暴とも取れる行為に、麗奈は慌てふためいた。麗奈は、勉が放り投げた毛布を拾い、それを抱えて立ち上がった。すると、後ろから伸びていた勉の手が、麗奈をしっかりと捕らえた。
「…捕まえましたよ、お嬢様」
「あっ…勉さん…」
ぎゅっと抱きしめられたかと思えば、くるりと向きを変えられ手をしっかりと絡め取られた麗奈は、先程まで居た玄関付近の壁のところへ引っ張られていった。
「勉さん、どうなさったんですか?」
「僕の願いを、聞いてくださるのでしょう?」
「それはそうですけど…」
「それならば、僕の言うことを大人しく聞いてください」
勉の言葉に、麗奈は眉根を寄せた。
そんな麗奈の様子に気づかず、勉は麗奈の体をくるりと反転させた。麗奈の後ろにはぴたりと勉が密着し、麗奈の眼前には2階へと続く螺旋階段がある。
勉は、麗奈とともにゆっくりと腰を下ろして座った。

「これが、僕の願いです。お嬢様と…初めての共同作業、とでも言うのでしょうか」
弾んだ声で嬉しそうに言う勉の両脚の間に、麗奈はすっぽりとおさまっていた。自分の両脚の間の麗奈を後ろから抱き締めた勉は、満足げに笑った。
「共同…作業?」
「ええ。お嬢様が拒否なされば、僕のこの願いは叶えることが出来ません。しかしこうやって、今僕はお嬢様を抱き締めている。僕の願いを叶えてくださって、ありがとうございます」
勉は、麗奈が抱える毛布を麗奈の手から取ると、自分の肩に掛けてから麗奈を包むように巻き付けた。
「お嬢様、二度寝のお時間です」
勉が麗奈の顔を覗き込むと、麗奈は既に眠っていた。
「酷いですよ、お嬢様。僕を置いて、真っ先に寝てしまわれるなんて」
勉は麗奈の肩に両腕を回し、しっかりと麗奈の逃げ道を奪った。

< 105 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop