Toxic(※閲覧注意)
──やっぱり世の中、甘い話なんてないのだ。

若くてイケメンで、頭もよくてセックスもうまくて……しかも大会社の社長のご子息。

そんなハイスペック過ぎる男性が、こんな38(今年で39)のバツイチ崖っぷちオバサンの前に、都合よく現れるわけがない。

正直、どこかで不思議に思ってはいた。

こんな若くてイイ男が、どうして私なんかの相手をするのだろう、と。

……そっか、アバンチュールがしたいのは、大和の方だったのね。

よかった、本気で好きになる前で。


「結婚してたの? 全く聞いてないよ」

「あれ? まじで言ったつもりでいた」

……嘘ばっか。

きっと彼は確信犯だ、でもそれを責めるのは何か違う気がした。

だって、こんなのラブゲームだとたかをくくって、訊かなかった私も悪い。

でも、どうせ嘘つくなら、嘘つき通してほしかったな。

不倫って知った以上、私はもう……。

「でも、別にそんなの関係ないじゃん」

大和は悪びれもせずそんなことを言った。

前言撤回、これ、怒っていい気がする。

「何が関係ないの!」

「だって俺、響子のこと、本気で好きだし」

あまりに真剣な顔で言うから、一瞬気持ちが傾いてしまいそうになった。

…………でも。

「知らない。……もう連絡してこないでね」

私は淡々と言うと、一万円札をテーブルに置いて、席を立った。

「は?なんで?」

「じゃあね、ばいばい大和。楽しかった」

笑顔で手を振って、私は店を出た。


ほんの一瞬だけど、いい男といい夢見れてよかった。

本気で好きになる前で、ほんとよかった。

ねえ……なんで追いかけて来てくれないの?

そう思ったのは、きっと気のせいだ。


< 83 / 123 >

この作品をシェア

pagetop