毎日、失恋。
「へぇ…僕の名前、覚えてくれてたんだ。」

距離は更に縮まっている。

「そ、そりゃクラスメイトなんだし。」

いくらクラスの中で孤立しているとはいえ名前と顔くらいは把握している。

ましてや彼は他校の生徒までが知るスーパー高校生だ。知らないわけがない。

「いつも興味なさそうに窓の外ばかり見てるのに?」

「窓の外って……」

遂に八神尊は私の座る席までやってきた。

「あっ、違うか。」

穏やかな印象の普段の彼からは程遠い、何かを企んでいるような顔して彼が言った。

「例外がいたね。いつだって興味なさげにつまんない顔してる高橋さんが唯一、過剰反応示す人。」

「えっ…」

そう言いながらほっそりとした人差し指を立て私の頬に這わせてくる。

ここまで来ると蛇に睨まれた蛙と同じ、もう身動きできない。

やがてその指は顎の辺りまで滑ってくると私の顔を意図も簡単に上向かせた。

そのままゆっくりと美しく整った八神尊の顔が近付いてくる。

咄嗟に目をギュッと瞑った。

すると、

ふうって思い切り息をかけられた。

驚いて目を開けるとかなり近い距離に八神尊の顔が…。

「うっ…」

「好きな男でもない相手にそんな無防備に目を閉じちゃ駄目でしょ?」

そう言うと思い切りデコピンされた。

「イッタァ…」

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