旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「ありがとう。……こんな俺を好きになってもらえるよう、これから努力するから」

なにを言っているのだろうか。彼は素敵で魅力的な人だ。俊也さんだからこそ、好きになるのは時間の問題なのに。どうして『こんな俺を』なんて言うの?

喉元まで出かかった言葉は、彼のぬくもりに包まれた瞬間飲み込んだ。

思ったより疲れが溜まっていたのか、次第に瞼が重くなる。

「今日からよろしくな、俺の奥さん。……おやすみ」

旋毛に落とされたキス。ドキッとなるものの、彼の大きな手が背中や髪を行き来するたびに、眠気に襲われる。

緊張した新婚初夜。私たちはただ、お互いのぬくもりを感じて眠りに就いた。

次の日、目が覚めると私の左手薬指には結婚指輪がはめられていた。スヤスヤと眠る彼の左手薬指にも……。
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