旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
「まずは乾杯しようか」

「……はい」

言われるがままグラス同士をぶつけ、恐る恐る一口飲むと、思ったよりも飲みやすく、なにより美味しかった。

「美味しい……」

「それはよかった」

私の反応を見て、彼はホッした様子。

そして門脇部長がカクテルを飲んでいる姿を、つい眺めてしまう。

店内は薄暗くて、お店の中央にあるピアノからジャズが流れてくる心地よい空間。大人が来るようなお店に、緊張していたけれど……。

こういうお店って門脇部長のような大人の男性が似合うよね。カクテルを飲む姿も、悔しいくらいカッコいいもの。

そのまま目の前に広がる夜景に目を向けた。

なんか不思議な感じがある。あの門脇部長と実家に結婚の挨拶に行って、彼が御曹司だと知り、こうしてふたりでバーに来ているなんて……。

怒涛の一日を振り返っていると、門脇部長が口を開いた。
< 53 / 262 >

この作品をシェア

pagetop