残酷なこの世界は私に愛を教えた




正直な話、私は祖父母のことも好きではない。


噂話や人の不幸話ばかりしている典型的な嫌みな老人だ。



でもやはり母親の親であるから、自分の子供は心配でよく父親について問い詰めていた。



しかし母親は父親と結婚していると思っている。



話は噛み合わず常に口論状態。










『あの男はどうしたんだ!』



『孝彦は忙しいから私達が起きている時は帰ってこないの! でもちゃんと夜帰ってきて色々やってくれてるの!!』



『何を言ってるの? もうあんな男に夢を見るのはやめなさい!』



『は!? 何を言ってるの、はこっちの台詞よ!!』








私はその言い合いの声が嫌いだった。

その後の、祖父母が漏らす母親への悪口も嫌いだった。



いつもは祖父母に向けられるその凶器が私を目指しているのを見て、何かが切れた音がした。





その後は、記憶が曖昧だ。

ただ楽になったことだけは分かる。




そしていつの間にか私は声が出なくなっていた。




─────




< 178 / 197 >

この作品をシェア

pagetop