残酷なこの世界は私に愛を教えた
◇◇◇
あれから本当に毎日屋上で先輩とお昼を食べている。
気付けば、先輩と出会ってから一ヶ月が過ぎていた。
「今日の現代文眠かった~。高木先生、知ってる? ……めっちゃ声優しくない? ……だよね、ほんとに子守唄」
今日も先輩は眠そうです。
そして眠そうな顔もイケメンです。
「……高瀬さん? 今日、どうかした? 何か元気無いけど」
え。そんなに顔に出てたかな?
昔から、ネガティブなことは口に出せない性格だった。
「教室、戻りたくないの?」
先輩はいつも、私の思っていることが分かるかのようだ。
違う、と否定する前に先輩の声が遮る。
「分かるよ~、俺も戻りたくねえもん。色々あるよな」
良いんだよ、と一言だけ先輩が言った。
“次の授業の先生あんまり得意じゃないんだよね”
打ってから、自分で驚いた。こんなこと、言うつもりじゃなかった。
慌てて送信を取り消そうとする前に先輩が見てしまう。
「誰先生?」
“高島先生”
「あー、俺も分かるよ。あの先生自分で進めていっちゃうもんな」
こんな小さなことだけど、私の中にある他人との壁が、先輩との間だけで無くなったのだろう。
この時の私は気づいていなかったが。