残酷なこの世界は私に愛を教えた


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隼人へ


言ってなかったけど、ぼくは病気です。小児がんです。


まだ元気な内に、これを書いておこうとおもいます。もっと病気が進行したら、この気持ちも無くなってしまいそうでこわいから。



ちょうど一年前のあの日、屋上でぼくを引きとめてくれてありがとう。



「俺がお前に生きてて良かったって思わせてやるからな!」って言ってくれたよね。



今、ぼくは毎日が楽しいよ。

隼人と居る時間が楽しい。


あの時、死ななくて良かった。隼人に出会えて良かった。生きてて、良かった。


隼人はぼくの太陽だ。まぶしいくらい、ぼくを照らしてくれる。

ずっと病院にいたぼくに生きることの楽しさを教えてくれた。

ありがとう。本当に、ありがとう。



だけど、やっぱり苦しいね。

ぼくは、多分病気で死ぬ。


ずっと隼人と遊んでいたいな。

死にたくないな。


逆にこわいんだ。


やっと生きることの楽しさに気づけたのに、それももう一年も続かない。





ねえ隼人。生きていたいよ。






死にたくないよ。







なのに最近、すごく体が痛いとき死にたいと思っちゃうんだ。



そんな自分もこわい。



自分を失っていくみたいで、こわい。





隼人がこれを読んでいるってことは、ぼくが死んだ後だよね。


もし隼人にひどいことを言ったらごめん。


隼人は何も悪くない。


隼人は、ぼくのヒーローなんだ。

ぼくが死んでも、そのままでいて。

そしてまた、誰かのヒーローになって。





最後に、隼人。ありがとう。





生きてて、楽しかったよ。

幸せだった。








5月20日

8歳



山中壮介




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