【短】もう…離さないで
震える手で、090に続く番号を押す
『もしもし、香奈?』
「うん」
『なに?』
あぁ、やっぱりこの反応は怒ってるよね
あたしに愛想尽かしたかな
「良太郎、ごめん、ごめんなさい」
『香奈?』
「あたし、確かに遊び人だったよ?
でも“だった”なんだよ。
良太郎に会って、あたし変わったの
自分でも知らなかった、こんなに一途な性格だったなんて
でもね、怖かったんだよ。
よく遊んでた頃、一人になったの
そんときに味わった孤独がすごい怖かった
だから、良太郎と付き合って良太郎に一途でも、その恐怖からは抜け出せなかった」
『ちょ、落ち着いて?』
「怖かった、バイトに学校に忙しい良太郎に捨てられるのが。また一人になるのが
、、でも結果、良太郎を傷つけてまた一人
ごめんなさい。
本当にごめんなさい。
もう良太郎を困らせるのも、孤独に怯えて生きるのもしたくない」
『香奈、今お前どこにいるの?』
「家」
『ちょっと待ってろ』
ツーツーツーーー
ごめん、もう遅いよ。
ガスは満たされてくよ