旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。

冷たい声が鼓膜に響いて、えっ？と思いながら彼を見直す。
皆藤さんは悔しそうに唇を噛むと目線を俯け、ぎゅっと掌を握って顔を上げた。


「だからって何だ。そっちには関係ないだろ」


これは俺達二人の問題だと冷静に言い放ち、さっさと帰れと克っちゃんに促す。

克っちゃんはちらっと私を振り返るとバツが悪そうに顔色を曇らせ、それでも謝りもせずに足を前に向けた。そして、皆藤さんの脇を擦り抜けて、二、三歩進んだ先で振り返り＿＿。



「未彩」


名前を呼ぶから何となく目線を向ける。
視界に入る克っちゃんの顔は真剣そうで、呆然としてる私に呑まれることもなく……。


「こいつと別れたら、俺がお前を貰ってやるよ」


だから安心しろ、と馬鹿みたいなことを言って笑い、肩を竦める私を無視して去って行く。



（何なのよ！もう！）


言いたいだけ言って掻き乱しといて…と背中を見つめ、許されるなら石でも放り投げたい様な気分に陥る。

だけど、今は目の前にいる相手にどうにか弁解もしたくて、それでも何をどう言えばいいのかが分からず、声を詰まらせた……。