旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。

その姿を見つめながら自分が彼の妻になったんだ…とまた実感する。
こうしてこの家で一緒に暮らし、庭の手入れをする為に彼と結婚した……。



（えっ？彼を好きで結婚したんじゃないの！？）


パッと自分自身に問われたような気がして、ビクッと立ち止まる。

いい条件が出されたから結婚を決めたんだろう…と言ってた社長の憶測と、それを話してた克っちゃんの声が耳の奥に響き渡り、立ち竦んだまま愕然とした。




（私……）


気づいてはいけないことに気づいた様な感じで、オロオロと焦るように辺りを見た。
でも、それを彼に悟られてはいけないと思い、敷居を跨いで玄関口に何とか入ったけど＿＿＿。



（私…この家に住んでもいいの？）


そんな気がして怖気付く。

自分の目の前に見える広い廊下の端にある月詠みの庭が、突然遠い存在の様に思えてきて、呆然としたまま廊下の果てを見遣ってしまった……。