旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
(そんなの言えるわけないじゃん。おばあちゃんがあんなに、私をよろしく…と皆藤さんに頼み込んでたのに)


悲しませるようなことを自分の口から発するもんじゃない。
自分の気持ちがあやふやなら、ハッキリするまでこの家に留まればいいだけのことだし、それまでに庭のリフォームを完成して、趣味と実益を兼ねた立派な庭を作り上げればいいだけのことだ。


(そのうち彼の方から先に、「別れよう」と言ってくることもあるかもしれない)


あの香りを身に付ける場所が、彼にはあるんだから…と思い出して溜息を吐く。

結婚を打算的に決めた私だから彼のことは責められないし、行動を一々監視して、嫉妬を見せることだって出来ないと思うから、この件については文句も言えない。


肩を落としながらキッチン内を歩きだす。

歩きながら皆藤さんがお風呂から出て、自分の部屋へ来る前に寝てしまうのはどうだろうと思いつき、そうだ、そうすればいろんな厄介事を気にしないで済むかも…と安易に考えた。


そうしようと意気込んでキッチンを出た。
だけど、思いとは裏腹に足取りは遅くて、思うように前には進まず、気持ちが重く沈み始めた___。


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