次期院長の強引なとろ甘求婚


 私の驚いた様子を見て、彼は先に自己紹介をしてくれる。

 三角さん……いや、三角先生、か……って、ちょっと待って! 三角って、ここの病院の名前、三角だったよね?! 関係者?!


「こんなところでお会いすることになるとは……木寺耳鼻科からの紹介状、拝見しました」

「はい……」

「この間、話してくれたことが原因だよね?」


 病院の先生という雰囲気をさっと消して、三角先生は親身で優しい言葉をかけてくれる。

 その瞬間、不覚にもぶわっと目に涙が浮かんでしまった。


「あっ……すみません」


 気が緩んだせいか、涙なんか見せてしまうところだった。

 慌てて下を向き、バッグからハンカチを出して目頭を押さえる。


「耳の聞こえは、処方する薬を飲んで、睡眠もちゃんと取れるようになったら治るはずだから、心配いらない。突発性難聴って、聞いたことあるかな? 過度のストレスとか心労で、突然耳の聞こえが悪くなるんだ」


 顔を上げられず、俯いたまま「そうですか」と返事をする。

 その声も泣きかけたせいで微かに震えてしまっていた。


「だけど良かったら、この間してくれた話、もう少し詳しく話してもらえないかな?」

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