異世界から来た愛しい騎士様へ
「それを羽織って、部屋の端に居てください。………おまえを傷付けさせたりはなしない。」
ミツキはエルハムの方を見ないまま、男の魔法をジッと見つめて、短剣の動きを見つめていた。
その横顔を見て、エルハムは出会ったばかりの頃のミツキの顔を思い出した。
幼く、誰も信じられず、目の前の人を疑っていたミツキ。
そんな彼は、今はここにいない。
守りたいもの、そしてこの世界で暮らしていくと決めたミツキの瞳には、強い意思が見られたのだ。
まっすぐ前だけを見る、そんな頼もしい横顔だった。
地面を蹴ったと思うと、ミツキは俊敏にベッドから移動し、細身の剣で次々と短剣を落としていく。
黒服の男に近づくと、躊躇せずに腹部に剣を切り込んでいく。
「っっ………危ない!」
男の服だけが剣に着れ、苦い顔を見せた。
が、すぐに口元をニヤつかせた。それを見て、ミツキはハッ!としたけれど、その頃にはすでに遅かった。
ミツキの足元には小さな鉄の塊が落ちていた。が、すぐに形を尖った物に変えて、足元からミツキに向かって飛んできたのだ。
ミツキは、避ける時間もなくその攻撃を全て体で受けてしまった。
けれど、対魔法の宝石のせいなのか、威力はそれほどでもなく、体に鉄が当たっただけで済んだ。鋭利なもので斬られた感触はなかった。けれど、沢山の鉄に体の至る所をぶつけられ、よろめいてしまった。
その隙をコメットの男が見逃す訳もなく、すぐに魔法で作り上げた太い剣で、ミツキに襲いかかった。