異世界から来た愛しい騎士様へ



 「それから、数日後に、一人の黒い男がやってきたのです。たぶん、両親を殺した男だと思います。その人が青い果実を私に渡して、次にエルハムがこの店に来た時に殺さなければ、おまえを生かしてはおけない。毒入りの果実を渡しておく。明日、エルハムは街に来る予定だから実行するようにと言われました。だから、私は…………。」

 
 震える声でそう話した後、セイは少し離れた所に立っていたエルハムの方を向いて、膝をついて頭を深く下げた。
 それは、シトロン国や隣国では首を差し出す意味を持つ謝罪の方法だった。深く頭を下げ、首の後ろをさらけ出して、いつでも剣で切られるように、という意味があるのだ。

 その格好のまま、セイは震える体と声でエルハムに謝罪の言葉を口にした。

 「両親が死に、自分の命と命と同じぐらい大切な店を守るためとはいえ、エルハム様を襲ってしまったという事は、黒服の人たちと同じ事です。いつも優しくしてくださったエルハム様にご恩を返すどころか、傷つけてしまうところでした。そして、ミツキ様には本当に傷つけてしまった。………私は許されないことをしました。どんな罰も謹んでお受けします。」

 そこまで言うと、真っ赤になった目と頬のまま、セイは顔だけを上げた。そして、とても悲しい顔でエルハムを見つめた。



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