異世界から来た愛しい騎士様へ



 ふわふわの金髪は窓から入る太陽の光で更に綺麗に光っている。同じ色の長い睫毛、真っ白で艶のある肌にピンク色の唇。近隣の国の王子達からも注目を浴び、結婚の申し込みも多いという、魅了する容姿。美女と言われるのも納得の美しい女性だとミツキも思っていた。
 けれど、彼女自身は至って普通の女性で、話せば楽しそうに笑ったり怒ったり、すねたりする活発な人だった。姫という立場や、美しい容姿を誇示する事もなく、自然体で人々に接する性格は好感を持てた。
 そして、怖がりなのに自分が傷つくのも恐れずに見知らぬ人でも自分の国の民とわかれば守ろうとする。いや、自分の国の人でなくても、彼女は助けるのだろう。そんな強い女性であり、ミツキはそんな彼女だからこそ、従い守ろうと思っていた。

 しかし、今腕の中にいるエルハムは、強さも見せずただ無防備に寝ている。彼女は自分より年上とは思えないほど、幼く見えた。ミツキは彼女を見つめながら微笑んでしまう。

 エルハムと一緒にいると、心が休まり、そして笑顔になるのがミツキにはわかっていた。
 異世界に来て、知らない世界で弱っているから、頼られたり優しくされたりして嬉しいのだろう。そう思っていた。
 しかも、彼女は綺麗だ。そんな彼女に求められれば、どんな男でも嬉しくないわけはないだろう。

 それに、いつかは彼女の元から離れて日本に戻るのだ。これ以上親しくしてはいけない。
 そんな風に思っていた。


 「セリム………。」


 彼女が寝言で呟いた言葉に、ミツキは思わず動きを止めてしまう。
 幼い頃からエルハムの近くにいた騎士団長のセリム。その名前をエルハムは穏やかな表情で呼んだのだ。

 その瞬間に、ミツキは妙な苛立ちを感じた。


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