女王陛下のお婿さま

 クラウスが手を引きアルベルティーナをエスコートして玉座の前へ。着くと二人は揃って前を向き、大広間を見渡した。

 よく知った顔もあれば、全く知らない顔もある。そんな中に、ヘーメル国王マクシムとヨハン王子の姿も見えた。もちろん、二人がよく見えるど真ん中に偉そうに立っている、ファビオ王子も。


 ――――パレン侯爵家の借金は、アルベルティーナの父の助言を受け、彼の夜逃げした叔父を探し出した事で解決した。いくら爵位を放棄したとはいえ、それを作ったのは叔父だ。今後はその叔父が王国の監視下で働き、返済する事になった。

 売り払われた土地や物は戻らないが、それでパレン家が困窮する事は無くなったのだった。

 アルベルティーナはもう一度クラウスと視線を交わす。こんな晴れの日に、隣に彼がいる幸せを噛み締めて……

 大扉にいたニコライが二人のすぐ近くへ歩み出る。そして――――


「――――皆様、ご静粛に。お二人は先程、神前で婚約の誓いを交わされました」


 ニコライの言葉に会場から拍手が起きた。彼はその拍手が収まるのを待って、言葉を続けた。


「婚約の証としまして、この場で白バラの交換を致します。皆様にも是非ともお立ち合い願います」


 ハレルヤ王国の慣習で、婚約した二人は白いバラを送り合う。白いバラの花ことばは純潔と――――約束。

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