女王陛下のお婿さま

 併合すればハレルヤ王国の一部になる。破綻して国民が路頭に迷い、飢えて死ぬ事は無いのだ。

 ハレルヤ王国にとっても、ヘーメル国独自の高い農業技術を利用する事が出来るので、併合はお互いにとって利益がある事だった。

 今日はその調印式。実際に併合するのは一年後なのだが、両国共にその準備が必要だからだ。

 ヘーメル国王の希望で、調印は式典という形を取らず、ハレルヤ王国の城の一室で静かに行われた。

 出席したのはハレルヤ王国現女王アルベルティーナと、前国王クリストフ。ヘーメル国からは国王マクシム・オット・ヘーメルと、その息子ルイ・ファン・ヘーメル。他は数名の官僚などだけだ。


 調印が滞りなく終わると、そのまま会食となった。クリストフとヘーメル国の王マクシムは長い併合の話し合いや手続きの中で、年齢も近い事から気が合い親しく話すようになっていた。


「――――今日の調印でやっとひと段落ですね。私もヘーメルの国民も、安堵しました。ありがとうございます、クリストフ様」

「いえ、でも……本当にこれで良かったのですか? 併合してしまうと、ヘーメルの王家がなくなってしまうというのに……」


 併合するとヘーメル国はハレルヤ王国になる。一つの国に二つの王家を作るわけにはいかないのだ。

 必然的に、ヘーメル王家は消滅。今後は公爵を名乗る事になる。
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