初恋 ~頑張る女子と俺様上司の攻防戦~
さすがに龍之介には聞かれたくなくて、高層マンションのバルコニーまで出て通話ボタンを押した。

「もしもし」
幾分不機嫌そうに出た電話。

この時の私は.、樹里ちゃんに文句を言ってやろうと思っていた。
母親面なんてする気は全くないけれど、約束を守らないのは人としていけないと思うから。一言ぐらい言いたい。

しかし、相手の声は意外なものだった。

「こちら新宿駅前交番です。御影樹里さんのお母様ですか?」
「え、ええーっと、御影樹里は娘ですが・・・」
なんで?
新宿駅前交番?

「もしもし、もしもーし」
ボーッとしてしまった私に、電話の向こうから何度も声がかかる。
「はい、すみません」
「お嬢さんを保護しておりますのでおいでいただけますか?」

「は、はい」
返事はしたものの、私は混乱していた。
何で、イギリスにいるはずの樹里ちゃんが・・・


「どこから?」
窓を開けて龍之介が顔を覗かせた。
どうしよう、どうしよう。
同じ言葉が、頭の中でグルグル回っている。
龍之介に言った方がいいよね。
でもなあ・・・

「うん、えーっと」
しばらく迷ったけれど、結局すべて話すしかなかった。
< 216 / 233 >

この作品をシェア

pagetop