ココロとセツナ
突然、天野マナは俺のクラスへ転入してきた。

彼女とはある理由によって仲良くなり、神社へも頻繁に遊びに行くようになった。

マナの兄にあたる時刈爽さんは、33歳にして宮司をしており、俺のことを弟のように可愛がってくれた。

岩時神社は、地域の人々に愛されているだけではない。この御神域には蘇りの御利益があるとされ、世界各国から参拝客が絶えない。

境内にある神社カフェも、大盛況である。

そのため、近所に住む俺はいつしかカフェを頻繁に手伝うようになっていた。

6月の終わり。

体がだるい。

俺は知っている。
眠りには、再生の効果があるという事を。

そして、眠った後の体と心からは、


極上の優しさが生まれるんだ。


カフェの休憩室でにあるソファでうたた寝。
自分に言い訳しながらの、サボり。

巫女姿で販売をしていたマナも、休憩室へとやって来た。

「眠り姫か」
マナは俺を見て苦笑した。

「『緑色』海斗は、癒し系だから」
自分でも言ってみる。
そう、ちゃんと今は『緑色』であると自覚している。

マナの、何もかもお見通しといった表情。
別に、からかわれたって悔しくはないけれど。

こちらから、からかってみたくなる。

「キスで起こしてくれる?」

聞いてみただけ。

彼女の反応が、見たかっただけ。

それなのに。

彼女は目を見開いて、恥ずかしそうな表情を見せた。

そして、どんどん顔が赤くなった。

それを見ただけでも、俺の心臓はギュッと、音を立てたというのに。

ゆっくりと、彼女はためらわずに近づいて来た。

ぞくり、と肌がざわついた。

言い出した手前、受け取る覚悟をする。

滑らかな唇がそっと、俺の唇に触れた。

体の奥から、ぽかぽかと温かい何かが廻る。
じわじわと広がる。

強くて、嬉しくて、楽しくて、湧き上がる。

これは、一体何?

見られたくない。

今、顔が真っ赤になっているから。

マナから目を背け、言い訳をするように呟く。
「巫女にキスされるなんて、今、すごくイケナイ事してる気分…」

「巫女ではない」

マナも、恥ずかしそうに微笑んだ。

「不死鳥」
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