あまい・甘い・あま~い香りに誘われて
着替えをおえた彼女は、クラスのみんなと同じようにアロハシャツに可愛くハットをかぶり戻ってきた。

すでにお菓子は完売で、フラダンスショー終了とともにハワイアンカフェも閉店した。

「みんなで写真とろうぜ!!」

倉田の言葉に全員で写真をとり、女子だけ、男子だけの集合写真を撮った。

「倉田、悪い、これで頼む」

俺は携帯を倉田に手渡し葵を引き寄せた。

昨日から何人の女に頼まれたろうか。

「一緒に撮ってもらえませんか?」

葵がチラチラこっちを見ながら気にしていたのは気づいていた。

葵しか関心がないし、他人に俺の写真を所有されるなんて気分が悪いから

「彼女としか写真は撮らないから」

俺のストレートな物言いに倉田が毎回苦笑いしながらフォローしていたっけ。

「ごめんねー。コイツ彼女一筋だからさ。代わりに俺じゃダメ?いつでもキミを一筋にできちゃうよ~」
倉田は文句を言いながらこうしていつも葵以外に言葉足らずの俺をフォローしてくれるいいやつだ。

「とるよー」

そっと彼女に耳打ちする。

「俺とのツーショットはずっと葵だけだから」

頬を染めた彼女との子供の時以来のツーショット。

やっと二人で撮れた写真は、俺の彼女だけが写るバースデー写真のアルバムに追加されるんだ。

この先もずっと、純白のドレスに身を包む彼女とのツーショットを撮るために俺は囁くんだ。

「好きだよ葵。

ずっと俺を好きでいろ…葵。」

そして彼女の左手をとりいつものようにそっと唇をおとす…手の甲ではなく薬指に…

「……!」

ペロリと薬指をなめられ葵がさらに頬をそめる。

「…もう唾つけたから…」

彼女を離すつもりはない。

転校初日に宣言したとおりになるなんて誰も今は信じていない。

10年後……一生涯離すつもりがないと神の前で誓うことになるのはまたいつか話してあげよう。

俺の初恋を実らせた話を俺たちによく似た可愛いキミたちに。


     ーおしまいー
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