ピュアダーク
 ベアトリスがそっと側に寄り優しくアメリアを抱きしめた。

「これでよかったのよ、私のことは心配いらないわ。これからは自分とヴィンセントのことを考えなさい」

 ベアトリスはヴィンセントを見つめた。全ての真実を知り、ようやくヴィンセントと向き合える。
 リチャードもパトリックも祝福するように見ていた。

「コール! 一体どこへ行ってたのよ。急にみんなで姿を消すからビックリしたわよ。ところでライフクリスタルはどうなったの?」

 マーサがコールに抱きついた。

「ライフクリスタル? そんなものもういらない。俺だけ長生きしたってお前がいなきゃ意味ないだろう」

 コールはマーサを愛しく抱いた。

「どうしたの? なんだか急にやさしくなったみたい」

 ヴィンセントとベアトリスに視線を移すとコールは声を掛けた。

「と、言う訳だ。もう俺はお前達を狙わない。だけど他のダークライトには気をつけるんだな。まあ襲われそうになったときは助けにいってやってもいいがな」

「ああ、その時は頼むよ」

 ヴィンセントもコールに対してわだかまりはもうなかった。全てを水に流すことにした。

 コールはバツが悪そうになりながら照れた笑みを返し、そして今度はリチャードに許しを請う。

「リチャード、俺はこの後どうすればいい? 罪を償うためにもお前に逮捕されるべきか」

「さあ、ザックの件は証拠があがれば逮捕できるが、あの状態ではお蔵入りだ。ザックには悪いが、お前は一生をかけて自分で罪を償え。もう悪いことしないと誓ってな。そうすれば私も見て見ぬふりだ」

「そっか、今すぐには中々変えられないだろうが、人を殺すことは封印するよ」

「当たり前だろうが!」

 リチャードが突っ込むと辺りはブラックジョークにも取れる受け答えに少し苦笑いした。

 だが、凶悪なコールが心を入れ替えたことは歓迎していた。

 どこか和やかな雰囲気が漂う中、全てがこれで解決して終わるはずだと誰もがそう思っていたその時、突然十数人の白い服を着たものが現れ、ヴィンセントはその中の二人に素早く腕を掴まれ押さえ込まれた。

「お前達は誰だ。俺に何をする」

 アメリアだけがその事態を飲み込み、真っ青になった。
< 390 / 405 >

この作品をシェア

pagetop