ピュアダーク
 一番イライラしていたのはコールだった。

 鬱陶しいとばかりに、小馬鹿にした目つきでその話し合いを見ていた。

「あいつらのライフクリスタル奪ってやろうか」

 コールが小声で呟くとマーサが隣で我慢しろと肘鉄をついた。

 ようやくリーダーが口を開く。

「ダークライトを我々の世界に連れて行くことはできぬ。こいつはここで抹殺し、そしてベアトリスの処分は長の所につれていき、そこで判断を長に委ねる」

「そんなの嫌よ。ヴィンセントを抹殺されてたまるものですか」

 ヴィンセントを押さえつけているホワイトライトたちの手を払いのけて、ベアトリスはヴィンセントに抱きつき庇った。

「なんということだ、ホワイトライトの身分でありながらダークライトに心を奪われているとは。長が知ったら嘆き悲しむことだろう」

「何よさっきから聞いていれば、ホワイトライト、ホワイトライトって。いい加減にしてよね。あなたたちの何が偉いっていうの。ちょっと長生きしてるからっていい気にならないで」

「べ、ベアトリス? 落ち着いて」

 興奮するベアトリスをヴィンセントはなだめた。

 ヴィンセントもまた昔のベアトリスの姿を想起した。

 そしてベアトリスの髪の色が透き通る金髪になっていく。

 完全にホワイトライトの力を得たのがそれで証明された。

「それでは致し方ない。私が全ての責任を取るということで、二人をここで抹殺させていただこう」

 また悪夢の始まりだった。

 そのリーダーはブラムがやったときのような構えをし、攻撃の姿勢を向けた。

 ベアトリスとヴィンセントはお互い強く抱き合った。

 もう今度こそ逃げられないのかと思ったとき、目の前にゴードンがぱっと突然現れた。

「あれ、まだ戦ってたの? 終わったかと思ったのに。あら、人数増えてる。しかもホワイトライトばっかり。一体どうなってるの?」

 緊迫した状況に、突如降って沸いたゴードンのお陰で、一瞬の間ができた。

 ゴードンの出没にヴィンセントは閃いた。ブラムの見よう見まねで瞬間移動を試みた。

「ベアトリスしっかり俺に掴まれ」

 ヴィンセントが手を合わせたとき、瞬く間に二人は消えた。

「あいつ、ブラムのホワイトライトの力を受け継ぎやがった。各自、どこに行ったか手分けして探すんだ」

 リーダーが命令すると全てのホワイトライト達は一斉に姿を消した。

「ベアトリスたち大丈夫かしら」

 アメリアが祈る思いで二人の安否を願う。

 パトリックもリチャードもその思いは同じだった。

「ヴィンセントならなんとかするさ、それにしてもゴードン、お前いいタイミングで現れた。よくやったぞ」

 コールが褒めた。

「ん? オイラ、なんかした?」

 ゴードンは訳がわからなかったが、褒められたことだけは嬉しそうにニコニコしていた。

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