ピュアダーク
「あれ、どうしたの、なんか暗いけど、何かあったの」

 ベアトリスが心配そうに聞いた。

 サラはなんでもないと笑っていたが、ふと自分がジェニファーになったような気分になった。

 しかし身分の違いですでにもう負けている。

 ホワイトライトはディムライトには絶対的存在。

 ノンライト(=人間)だったものが、ライトソルーション、すなわちあの『水』を与えられホワイトライトにつくすように選ばれた者たち。

 ホワイトライトから『水』を得られなければただのノンライトに戻ってしまう。

 絶対に逆らえない。

 あの『水』を摂取すれば英知を授けられ、ノンライトよりもはるかに高い能力が得られる。

 ディムライトは競ってそれを奪い合う。

 ホワイトライトに気に入られるためにありとあらゆる手を尽くす努力を惜しまない。

 パトリックがベアトリスと小さいときに婚約させられたのも、ホワイトライトの力が欲しかっただけで政略結婚みたいなものだとサラは納得していた。

 ホワイトライトが身内になればディムライトの頂点に立ち、ライトソルーションの心配をしなくてもよくなる。

 誰もが手に入れたい存在。

 それがホワイトライト。

 だがこの時、崇拝していた存在が突然嫉妬の対象に変わる。

 割り切っていたものも納得がいかないものへとわだかまりを残す。

 馬鹿なことだと思っていても、感情が自然に湧き出てしまう。

 それでもそれは最小限のものでサラはまだ自分を押さえることができた、この時までは──。

 サラは偽りの笑顔を作り、ベアトリスと仲いいフリをして皆の輪に入っていった。
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