超新星ロボ ヴァルドーラ

出逢い

麗らかな陽気に包まれていたある春の日。

エミは家族で近郊のデパートに来ていた。
だが、なぜかその日に限って何も欲しい物がなかった。
「もぉ!ママが全然着いてこないよ!」
早く帰りたかった。そんなエミを見て
「ママはああなったら2時間は動かないんだ。諦めよう」
エミの父、恵蔵が生気の無い声で答える。
不意に弟の新太が泣き出す。慌てて敬蔵があやそうとするが、泣き止む事はなく。
「ほら、食べな」
新太の目の前に手を差し出す。一目見た新太は泣くのをこらえた。エミの手から飴玉を取り、口に入れると、笑顔がこぼれた。
だがエミの心は曇っていた。無性に広場ででも走り回って遊びたかった。あまり衝動的になる子供ではないが、今日に限っては抑えられない。感情が今にも爆発しそうだった。
「よし、休憩コーナーに行こう!」
敬蔵がそう言って二人を連れて行く。エミは渋々付いて歩いた。エスカレーターで三階に上がり、少し歩いた場所にあった。
敬蔵は空いているテーブルを見つけると、陣取って席に座った。新太はすぐそばにあるゲームコーナーが気になっているが、とりあえず席に座った。エミも席につこうとしていた。
急に心がざわついた。何だろうと思って見た先には、少し大きなゲーム筐体があった。
「パパ、あれは?」
エミの問いかけに恵蔵は指指す先を見た。
「あぁ、確か何年か前に出たゲームだったな。何で?」
「やってみたい」
エミの雰囲気が柔らかになっている。
「そうか、いいよ。ママが来るまでなら」
「ありがとう!」
恵蔵とエミは筐体の場所まで歩いた。全体が白であしらわれており、扉かついていた。誰かがプレイしていると外にシグナルが光る仕様になっている。今は誰もプレイしていない。扉を開けると中は少し余裕のあるコックピットがあり、全体がディスプレイになっている。コイン挿入口を見つけたので、恵蔵は三百円を財布から取り出して入れた。
エミはプレイシートに座ると、興味津々にモニターを見回していた。
「何かすごいねー、パパ」
「圧倒されるよなぁ」
「うんうん」
「操作方法とかあるかなぁ」
恵蔵がそう言って探そうとさた時、
「パパあ」
新太の声がした。
「ジュース飲みたい!」
「ちょっとだけ待ってて」
新太の方を見て答えた。
「あ、行っていいよ」
エミが操作パネルを見ながら言った。
「え?お前まだ何もわからないんじゃないか?やった事無いだろう」
恵蔵は驚いた。
「大丈夫。何となくはわかった」
「でも一回分しか入れてないぞ」
エミは笑って
「いいから。新太の方をやってあげて」
(娘がそう言うならいいか、まぁすぐ終わるだろうけど仕方ない)
そう恵蔵は考えた。
「わかった。終わったら戻ってこいよ。エミの分も買っておくからな」
「うんうん、ありがとう」
恵蔵は筐体から降りて新太の下へ向かった。その後すぐ扉が閉じた。

「よくわかんないけど、懐かしい感じがする。大体の物は知ってる」
エミとしても不思議な感覚だった。初めて触るはずなのに、何もかもが手馴れた、まるで自分の部屋のようだった。
セレクト画面から、スタートを押してみた。
画面が機体の選択に変わる。表示された10種類程から好きなロボットを選ぶようである。
「うーん、どれだろ」
エミの視線が変わるとその先のロボットに変わった。
「おぉ」
見ただけで選べるようだ。
「やっぱりこれかな、うん。これにしよ」
エミが選んだのはヴァルドーラ、このゲームのメインメカである。
選択完了すると、コックピットの中がヴァルドーラ仕様に変化した。エミは心弾ませた。
サブモニタが慌ただしく表示され、エミはそれらを一つずつ目で追った。
一通り確認する事十五秒。中央の操作パネルに表示されているスタートボタンに手を置いた。
「さぁ、行ってみよーー!」
こうしてゲームは始まったのである。
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