■捕らわれの男■
終了後の現実
男の二本の指に挟まれた煙草の灰がポタリと床に落ちた。



「…兄貴?」


「…大丈夫だ。何でもない。」



倉庫の空気は淀み、過剰な湿度と緊迫感、血の臭いだけが充満していた。



「なぁ、何で裏切った?」


半裸でアザと血にまみれた女の顔を覗き込む様に、男は腰を下ろす。



「…別に裏切ってなんか…」



長い前髪からチラリと覗く腫れ上がった虚ろ瞳が、男に向けられる。



「…そうか、残念だ。素直じゃない子は嫌いなんだ。」




男は手に持っていたそれの安全装置を外し、女の額に押し付けた。



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