甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
11.甘くてやさしくて泣きたくなるような
11.甘くてやさしくて泣きたくなるような


「ぷーすけ!」

私は声を張り上げて生い茂る木々に向かって呼んだ。

だけどぷーすけの鳴き声は聞こえず、ただザワザワと木々の擦れる音がしているだけ。

好奇心旺盛なぷーすけのことだから、何かすばしこい生き物を見つけて奥の方まで追いかけていったのかもしれない。

急に不安な気持ちが私の胸の奥に流れていった。

私は何度もその名前を呼びながら、草木をかき分けて中に入っていく。

きっとこの奥にいる、そんな気がして。

しばらく進んでいくと、少し開けた場所に出た。

昔人が住んでいたと言っていたから、広場として使われていたのだろうか。

背の高い雑草が生い茂る中に大きな石がいくつか並んでいる。

なんだか妖精でも出てきそうだわ。

昔、そんな物語を読んだ記憶が呼び起こされる。

透き通るような美しい羽根を持った妖精たちが、草むらの影からこちらを見てくすくす笑ってるような気がした。

でも、今はそんな悠長な想像をしている場合じゃない。

早くぷーすけを探して船に戻らなくちゃ。

もう一度大きな声で呼んだ。

その時、その広場の向こうの木々の間にガサガサと何かが通り過ぎたような音がした。

「ぷーすけ?」

私は速足でその音のした方へ進んでいく。


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