甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
18.あなたと出会えて
18.あなたと出会えて


翌朝、実家近くの駅前で待ち合わせ。

朝から晴れ渡る青空はとても気持ちがいい。

まだ少し肌寒いのでベージュのジャケットを羽織り、ピンクのスカーフを首に巻く。

母は、これからデートだと言う私に「これ持っていきなさい」と親戚のおばさんからもらったお菓子の詰め合わせを持たせてくれた。

門の前で見えなくなるまでこちらを見ている母に手を振りながら、まだまだ子離れできない母を今は愛しく思う。

駅前にある桜の老木が改札の屋根にもたれかかるようにその枝を垂らしている。

老木だけれど、未だに毎年春になるとかわいいピンクの花をたわわに咲かせた。

今年もまた濃いピンクの蕾が垂れ下がる枝にたくさんついている。

巡りくる季節と移ろいゆく人生。

これもまた清少納言の言う『いとおかし』なんだろう。

ひんやりとした朝の風を吹き上げながら、彼の車が私の前で停まった。

運転席の窓が開き、彼の顔が見える。

「おはよう」

「おはようございます」

私は助手席側に回り、車に乗った。
< 216 / 233 >

この作品をシェア

pagetop