図書館
エピローグ

あいつは図書館に、
夢の図書館に来れないと言った。

それは正しくないからだと。

おれには意味が分からない。

でも、多分、推測するに、
あいつは結婚しているから、
男の家になんて行ってはいけない。
そう考えているのだろうと思う。

でも、でもな、それは違うんじゃねぇか?

おれはその言葉を飲み込む。
だって、ここで叫んでも、
もう誰にも届かないから。

おれはまた本を読み始める。
週に一度、本を買いに行く。

この図書館をもっと充実させるために。
あいつが来たときに、
あいつにもっと喜んでもらうために。

おれは今日も1P、1P本をめくる。

おれの親父は、きっと叔父が言うように、
おれに会社を遺したかったのだろう。

でも、突然の交通事故で、
なにもそのための準備はできなかった。

人は死んで何を遺すことができるのだろう。

おれはこの図書館を遺す。

おれが会社を継がなかったように、
この図書館もあいつには見てもらえないのかもしれない。

でも、この図書館こそが、
おれが幸せな時間を過ごしたことの証明なんだ。
少しでも、例え一方通行の幸せだったとしても、
確かに、ここにはおれの想いがあったんだ。

それに、実は、おれは信じているんだ。
運命が、あいつとおれとを結びつけた運命こそが、
きっとあいつをこの図書館に、
いつか呼び戻してくれることを。

お前はそんなことはないと言う。

でも、おれはいつか必ず光が差すことを知ってる。
それは必ず。
それは今日かもしれない。
それは未来なのかもしれない。
でも必ず。
いつか光が差すことを知っているから、
今日もおれは本を広げる。


< 24 / 24 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop