桜の木に寄り添う

もう一度だけ

コウちゃんの切ない想い……ずっと傍にいてコウちゃんを見てきたのに。
 どうして気づいてあげれなかったのだろう。
 話くらいは、聞いてあげられたかもしれない。
 少しだけでも、気持ちをラクにさせてあげられたかもしれなかったのに。

 私は、前にりえが自分の話ばかりってイライラしていた時期があった。
 コウちゃんの想いを考えると、私は知らず知らずのうちに同じ事をしてしまっていた。

 こんな事に今更ながら気づくなんて……
 ごめんね……コウちゃん。

 胸がぎゅっと苦しくなり、持っていたペンを置いてしまっていた。

 傍にいれるだけでいい……

 そんなふうに思えるなんて本当に凄いよ。

 自分の気持ちを抑え、周りの人達に優しくできるコウちゃんは、凄く、凄く大人でカッコ良くさえ思える。

 私の話を聞きながら、腹が立っていた事もあったかもしれないのに。
 胸が締め付けられて、自分の想いを伝えたい。
 そんな時も、きっとあったかもしれない。
 それでも何も言わず、いつもアドバイスをくれたり私の味方でいつもいてくれていた。

 こんな私の味方でいてくれたんだ。

 コウちゃんは、私の背中をいつも押してくれている。
 私の気持ちを前向きにさせてくれていた。

 もう一度、もう一度だけ気持ちを伝えようと思わせてくれた。
 コウちゃんの切ない愛の形に、私の背中をまた押してくれたんだ。

 ありがとう……

 私は、感謝の気持ちでいっぱいになっていた。
 いつも助けられてばかりで、私にも何かできる事があるのだろうか。

 そして私はペンを手に取り、向き合う事を教えてもらった気がしていた。

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