桜の木に寄り添う

海辺

人は、人とつながり、支えあって生きているんだよね。
 ここ最近の私は、本当にそう思う。

 支えてもらって生きていることを実感している。
 辛いこと、楽しい事を、誰かと一緒に共有できることは素敵な事だから。


 昔の私は、ここまで思わなかった。

 事故に遭ってしまった事で、今まで気づかなかった部分に気づけたんだと。今は思えるようになった。

 そして、人のありがたみみたいなもの物凄く感じている。

 綺麗な景色、おいしいご飯。

 友人、家族、お客様。

 すべてに感謝して生きていく。
 これからもずっと……。


 新しく私の人生に関わるすべての事もそう。

 これからも私は、すべてに感謝をし、生き続けていくだろう。
 いつも笑顔でいられるように。

 私は、なんだか急に海をみたくなった。

 お母さんに頼み、車をだしてもらうことになった。

「珍しいね。なつが頼みごとなんて。」

「海が見たいの。どうしても。」

 広い空。広い海。

 波の音が心の黒い部分を洗いながしてくれる。
 そんな気がした。

「なつ、小さい時、よく海にきてたんだよ。お母さんも悩みがある時連れてきてたから。やっぱり親子だね。」

 少しだけど、覚えてる。

 波の音。潮の匂い。潮風。

 私はどうしたいんだろう。
 自分でも迷子になっている。

 心を洗い流されるように、自然と涙がこぼれた。

「潮風は、目にしみるね。」

 微笑みながら、私はこう言う。

 お母さんは、何かを察したのか、私にこう言う。

「後悔しない人生をなつには、送ってほしいな。」

 ありがとう。私、幸せ者だね。
 みんなに愛されてる。

 海をしばらく眺めていた。


 部屋に戻ったら、携帯が鳴った。

 安西さんだった。
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