桜の木に寄り添う

桜のポスト

嘘でしょ!?
 でも……夢ではない。
 結局、安西さんの事。伝えれなかった。

 はあーー。どうしよう……。

 あ、そうだ。ポスト。桜のポストだ。

 そこに、手紙を入れよう。

 便箋を取り出し、手紙を書き始めた。

 彼を目の前にするとなかなか言いたい事も言えなくなってしまう。
 手紙は、私にとって連絡をとる手段ではなく、思っていることを吐き出す手段でもある。

 安西さんの事を思うと、辛い気持ち悲しい気持ちも、私にはわかる。
 好きな人は、誰でもそばにいてほしい存在だと思うから。
 そして、いつまでも笑っていてほしいから。

 私は、言葉にはできない思いを、手紙を書いた……

 ーーーー

 ヒロキくんへ

 伝えられなかった安西さんのことを書きます。
 私はもうあなたとは会わないと約束をしました。
 なので、部屋が決まったら出て行ってください。
 ごめんなさい。

 なつみ

 ーーーー

 ポストに入れ、戻ると二人ともリビングにいた。

「 おはよう、なつー 」

「 おはよう 」

「 ご飯やるね 」

「 コウちゃんありがとう 」

「 あの。ポストに 」

 私は少し小声で言った。

 わかった。と言う表情で頷いていた。

「 そういえば、みんな休みじゃん!出かけよう!」

 コウちゃんが、またとんでもない提案をしてきた。

「 どこへ?」

「 なつの好きな買い物かな!」

「 買い物。こいつ買いすぎてるじゃん、いつも!」

 う・・・痛いところをつかれた。

「 お洒落するしか楽しみないし!」

「 じゃー、決まり!食べたら用意して集合!ヒロキ、車出してね。」

「 はいよ 」

 出発する前に、手紙を覗いた。

 急いでるような字で、だいぶ前に別れたけど?とだけ書かれていた。

 え。別れてたの?
 何が本当なのかわからない。
 複雑な気持ちで一杯だった。私がこんなに悩んだのは何だったのだろうか。
 どうして、何も言ってくれないんだろう。
 関係ないことはわかってるけど、言ってほしかった。

 そうしたら、こんな悩むこともなかったかもしれない。


 すぐに出発の時間になった。

 そして、桜のポストでのやりとりがまた始まった。


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