桜の木に寄り添う

違う花

まだあの夢のせいか体がふわふわしていた。

 今日は、リエの紹介してくれる家に向かう日。

「なつ。マンションまでそんなに遠くないから、早めに出よう!」

「うん。」

 2人でホテルから出て、そのマンションに向かった。
 しばらく進んで行くと……!

 そこは、見覚えのあるマンションだった。

「リエ……!ここって……」

「内緒にしててごめん。ヒロキが使えって。」

 そこは、前にみんなで行った、マンションだった。

「なつ。結構お金使ったでしょ?だから、ここ使わせてもらおう?ねっ?」

 私は、黙ってしまった。
 みんなよくしてくれるし、今まで甘えてきたけど、内緒にされたのが嫌だった。

 だったら、言ってくれればいいのに……。
 もやもやした気持ちでいっぱいだった。

 甘え続けるのが嫌で、ここまできたのに。

 しばらくしたら、家を探そうと思った。

「なつ。そろそろ、みんなに電話してあげてほしい。待ってると思うよ?」

「うん。わかってるよ。」

 私は、少し強めの言い方をしてしまった。
 ごめん。リエ。

 今は少しでも、みんなから距離を置きたかったから。

 わがままな私を、今はそっとしておいてほしい。

 春に咲いた綺麗な桜はもう散ってしまった。

 私の心の中には、今は違う花が咲いているのかもしれない。

 昔とは、違う気持ちが芽生えようとしている。
 こんな気持ちになったのは、初めてだった。

 だから……こんな気持ちも大事にしたいとそう思ったんだ。

 今なら、強くなれると思ったから。

 今しかないと思ったから。
< 55 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop