桜の木に寄り添う

就寝前

あかりちゃんは、部屋に入り私のそばに来てこう言った。

「 なっちゃん、膝の上に座ってもいい? 」

「 うん、いいよ 」

 よいしょ。

「 なっちゃん、いい香りするね!私ね、お母さんに抱きしめて貰ったことがないの。お母さんずっと具合わるかったから…… 」

 そうだったんだね。
 そういえば、あかりちゃんのお母さんの事。
 今思うと、ちゃんと聞いた事がなかった。
 あかりちゃんは、ずっと誰かに甘えたかったんだよね。
 子供は、大人に甘えてもいいんだからね。

「 あかり……なっちゃんと一緒に住みたい! 」

 あかりちゃん……

 私は、すぐに返答する事が出来ずにいた。

「 やっぱり、ダメだよね…… 」

「 少し考えさせてね 」

 子供を引き取るという事は、それなりの覚悟がいる事。
 安易な考えで答えてはいけないと思った。

 私にはそれができるのかな。
 今はまだ何も始まってない……中途半端な状態。
 こんな中途半端な状態では、きっと幸せにしてあげられない。


「 あかりちゃん、今日はもう寝よっか 」

「 うん! 」

 あかりちゃんは、もうパジャマを着て寝る準備はできている。

 とってもしっかりした子だ。
 今の私には、とても頼もしく見えて眩しかった。

「 電気、消すね! 」
 カチッ

 照明は、消えて暗くなった。
 私とあかりちゃんは、ベッドに横になる。

「 なっちゃんの手……温かいね 」

「 そうかな? 」

 そう言って、あかりちゃんは目を閉じた。
 涙が頬をつたりキラリと光っていた。

 ……今はずっとそばに居てあげられなくてごめんね。

 私はそう心の中で言いながら目を閉じた。

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