桜の木に寄り添う

心遣い

心が温まる落ち着く優しい味に、私は癒されていた。
 色々な事がたくさん起きていたからか、心が疲れてしまっていたのだろう。

 私とリエは、お会計も終わりお店から出ようとしたら、お店の奥さんに呼び止められた。

「 リエちゃん、お友達と食べて!デザートね? 」

 奥さんがそう言って渡してくれたのは、小さなお饅頭だった。
 そういう心遣いがあるからこそ、長年やっていけるのだろう。

 リエと私は笑顔でお礼を言いお店を後にした。

「 たまにデザートって言って色んなのくれるの。前はね、りんごをくれたんだ! 」

 リエは、笑いながら私にそう言った。

 私もお客さんが笑顔で帰れる。
 そんな居心地のいいお店にできたら……いいな。

 きっとそれまでには沢山の努力があったのかもしれない。
 私も自分なりにできる努力をしていきたいといつも考えている。
 色々なお店を巡り、気づくこともまだまだこれからあるのだろう。

 その気持ちだけは揺れることも無かった。

 奥さんの来てくれた人を大切に思う気持ちは、伝わったからこそ、心が温まり癒されたのだろうか。

「 リエ、あのお店また連れて行ってね! 」

「 気に入った?美味しかったでしょ? 」

「 うん、とっても…… 」

 私とリエは、そう話しながらマンションへ向かっていた。

 沢山の人がいる都会。
 私は冷たさや強さを強く感じていた。
 こんな温かい気持ちになれるなんて思ってもいなかった。

 今の私には、そういう気持ちにさせてくれたことが嬉しくて、たまらなかった。

< 90 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop