桜の木に寄り添う

見覚えのある場所

私とリエは骨董品店の近くまで辿りついていた。
「リエ、この辺のはずだよ」

 私が見かけていた骨董品店がなかなか見つからない。私達はきょろきょろとさがしている。

 絶対に見つけなくてはならないから、必死で探していた。

「あった」

「ここなの?」

「たぶん。ここだと思う」

 こんな感じの雰囲気ではあった。

「よし。入ってみよう」

 カランカラン

 お店の中は、誰もいないようなくらい静かだ。

 私は、周りを見渡し額縁を探した。

「すいません。だれかいませんか?」

 奥の方から、ガサガサと音がして人の気配はしていた。

 リエもそれに気付いたのか、一人で奥の方へ向かう。
 小声ではあるが、額縁の事を尋ねているように聞こえた。

 リエが、少し険しい顔で私の方へ戻ってきた。

「なつ。ないかもしれない」

 私は、前に通った時には見かけていた。売れてしまったのかな。

 私とリエがお店を出ようとした瞬間。
 お店の人が顔を出した。

 あれ。あの人。もしかして。

 前に電車で話しかけてくれた、おばあさんだ。

「あなただったの?また会えるとおもっていたよ」
 おばあさんも覚えてくれていた様子だった。おばあさんはそう言うと、お店に飾られている絵を取り外した。

「もしよかったら、これあげるよ」

 ずいぶん古くから飾っていたのだろうか。でもとても立派な額縁だった。

「もらえないです。こんな立派な」

「いいんだよ。古いものだけどね。使ってくれたら嬉しいよ。これで素敵な絵を飾ってくれないかな。きっとこれもその方が嬉しいさ」

 おばあさんは、私にそう言い私の膝の上に乗せた。

「私の主人がね、絵を描く人だったの。でももうずいぶん前に亡くなってね。これで新しい絵を飾ってほしいんだよ。お願い、あなたになら渡せると思って」

「大切な物なのに」

「そして、もし新しい絵が飾れるのなら、私にも見せてくれるかな?ちょっと待ってね」
 おばあさんはペンを取り出し何か書き始めた。

「はい。これ受け取って」

「はい。ありがとうございます」

 おばあさんは、私にメモをした紙を渡し、また奥へ戻ってしまった。
 そこに書かれていたのは、住所と電話番号だった。

 どういうことなのだろうか。

 書かれている住所は、見覚えのある場所だった。


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