Fake!!(フェイク)~漆黒の魔導師と呪われた乙女の物語~
「俺は…こんな所で…意志を曲げるわけにはいかねぇんだよ!」

レオルドは、肩で息をしながら再び立ち上がるとスルトに向かって吠えた。

『強情な…我が末裔ながら愚かにも程がある。王は国を統べる事のみ考えれば良いものを…。』

「黙れ!お前は俺が…今まで…何の苦しみも悲しみも感じずに、安穏と生きてきたと思っているのか?悪しき伝統に縛られ愛する者を失い…今度は生涯の友を失った。俺がどんな気持ちでロニィを…扉の封印を解く“鍵”に選び此処へ導いたか…お前に…それがわかってたまるか!」

床に倒れたまま、自らの心の痛みと怒りを吐露するレオルドの姿を見つめていたエドガーの体が、ザワザワと粟立った。


(…レオルド…貴方とロニィの絆が、今初めてわかったような気がするよ。貴方方はお互いを誰よりも理解し大切に思っていたんだね…。)

彼女の瞳から熱い涙が止めどなく流れた。


「俺の心は、あいつの血に濡れ赤く染まっている…俺は尊い犠牲を無駄にするわけにはいかないんだっ!」

レオルドのサークレットの魔鉱石が白銀の輝きを放ち始め、それを見たスルトの瞳に一陣の怯えが走った。
だが、それは僅かばかりの間で、直ぐに表情は固く引き締まり、陽炎のような気が彼の身体を覆った。
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