身ごもり政略結婚

私があいまいに微笑むと、彼はギュッと抱きしめてくれた。


「なにも心配するな。無事に産まれてきたら、皆メロメロだから」

「そうかな……」

「うん。俺なんて産まれる前からメロメロだろ?」


たしかに。
お腹が大きくなっていくのに比例して、彼の赤ちゃんへの愛が大きくなっているのはわかる。


「あっ、動いてる」
「ホントだ」


彼はすぐに私のお腹に触れて、赤ちゃんとのコミュニケーションを楽しみだした。


「元気なのはうれしいけど、ママを寝かせてやってくれよ」


そんな優しい願い事を口にしながら。


「大雅さん……大好きです」


いつもは照れくさくて自分からこんなことは言えない。

けれど、私のことをこれほど気遣う彼に、どうしても伝えたくなった。

彼がこの子に愛を囁くと私まで満たされるように、言葉にすると幸せが膨らむ気がしたから。


「結衣、俺も。俺も結衣が大好きだよ」


彼は私を抱きしめて、そっとキスを落とした。
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