ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
9. 危険なパーティー

「お腹周りは、きつくございませんか?」
「あ、はい。大丈夫……ですね」

40代前半くらい、だろうか。
黒髪をきりりとアップにした背の高い女性が、私の格好を眺めて満足げに頷いた。

マリーさんに紹介されたこの人は、井上貴子(いのうえたかこ)さんといって、有楽町の五つ星、ギャリオンホテルの副支配人なのだという。

私は今ここ、ホテル地下にあるロッカールームで、スタッフ用のブラウスとスカートを試着中だ。
この格好のまま、上のセレモニーホールで行われる予定のパーティーに忍び込む。ライアンが来る、パーティーに。


彼の、本当の気持ちが知りたかった。
何も隠さない、繕わない、まっさらな気持ちを聞きたかった。

私のことを、赤ちゃんのことを、どう思ってるのか。
これから、どうするつもりなのか。
もし彼が本気で別れたいと思っているなら、私も覚悟を決めるしかない。
だから。

――ライアンに、会いたいんです。協力してもらえませんか?

電話やメールじゃ、本心なんかいくらでも隠せてしまう。
やっぱり実際会って話すのが一番いい。
でも今の私は、彼がどこに住んでいるのかも知らないし……
悩んだ末、私はマリーさんに相談した。

何度か雑談するうちに知ったんだけど、彼女っていろんなホテルの内部事情に詳しいし、コネも持ってるらしいから。ライアンが泊っていそうなホテル、あるいは顔を出しそうなパーティーとか……調べることはできないかなって。

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