ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
10. 推理②

「ありがとうございました」

無事に検診を終え、お礼を言いながら診察室を出て。
ふぅう、と盛大に息を吐きだした。

痛みも出血もなかったし、大丈夫だろうと信じてたけど……
自分でも気づかないうちに、実はかなり、不安を感じていたらしい。

エコーで赤ちゃんの動いてる姿を見るなり、ボロボロ泣き出してしまったから。津田先生がびっくりしちゃうくらいに。

ほんとにほんとに、無事でよかった。
よくがんばったね。
もうあんなことしないからね。

お腹に手を当てて、つぶやいていたら。

入れ違いに、別の妊婦さんが中に入っていく。
私よりずっとお腹が大きい。そろそろ臨月って感じかな。
ご主人だろう。
もう心配でたまらないって風に、男性が傍に張り付いてる。

夫婦で検診を受けに来る妊婦さん、結構いるのよね。

仲良さそうだな。いいなぁ……なんて。
自分と比べて少しだけ羨ましくなったけど。
すぐ首を振って、その思いを打ち消した。

ライアンが私から離れたのは、ちゃんと理由があってのこと。
詳しくはわからないけど、昨夜の様子からして、シンシア絡みじゃないかって気がする。

きっと彼だって、戦ってるんだ。
私も、しっかりしなくちゃ。

しっかり赤ちゃん、守らなくちゃ。
それが今、私にできること――

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