わがままな美人

 こんなにも偉そうな男、そうそういない。

 秘書を所有物か何かだと思ってる?

 何か言いたい。
 何か反論を言ってやらねば、負けてしまう。

 なのに皮肉の一つも思い浮かばない!

「園田、車のキー」

 香子が悶々としているうちに、駐車場に到着してしまった。
 二人の目の前には、滅多に活躍の場が与えられない香子の水色の軽自動車がある。

「私が運転しますので──あ!」

 バッグからキーケースを取り出せば、千秋に奪われてしまった。

「副社長!」

「何度も言ってるだろ。忘れたのか? 俺は女に運転はさせない」

 そう言って、まるで自分の車とでも言いたげに鍵を開け、運転席に乗り込む千秋。

「………………いつか絶対、蹴っ飛ばしてやる」

 この男といる限り、自分は一生、ペースを乱され続ける。

 それでも我慢するのは、この男が上司様だから。

 待ってなさい。
 いつか必ず、その偉そうな顔を蹴っ飛ばしてやるから。

 絶対にね。


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