Love 【完】
2年半付き合った彼と、酷いケンカ別れをしてから3週間。
合鍵を返してと要求しなかったのは、わざとだ。鍵を返されてしまえば、わたし達の繋がりはもう何もなくなる気がしたから。
終わったことだ、と割りきったフリをしながら、結局わたしは、本当に終わらせることはできていなかったのだ。
こうして突然、彼がわたしの家を訪ねてくることを、心のどこかで期待していた。その期待通り、彼はやって来た。
けれど──。
「……来るなら言って。てゆーか、何時だと思ってんの?」
針がアルファベッドのL、午前3時を差す壁の時計に目をやりながらわたしは言う。
行きつけの居酒屋を追い出された彼がこうしてやって来るのは、いつもこの時間だった。見慣れたLの形。
彼が来る3時のL。夜中に起こされたって、会えたら嬉しかった。
きっと3時のLはLoveのLだ、なんて頭のわいたことを考えた時もあったっけ。バカみたい。
「……もう来ねーからいいだろ」
彼は低い声で言って、合鍵をテーブルの上に投げた。ガチャンと無機質な音が、夜の静寂に冷たく落ちた。