幼馴染は恋をする
朝は元々友達と群れるようなタイプじゃなかった。クラスの中で外されてるとかそんなんじゃなく、でもみんなとはちょっと違ってた。どちらかというとキリッとした顔でキャーキャー騒いだりしないから、冷めてるだとか、クールだとか、女子に頼られるような感じの存在だった。

それが、あの日を境にだ。俺は三年間通して朝と同じクラスだった。
いきなり来た二年の男子が朝を呼び出した。
そいつは二年で目立っていた。俺らも知ってるくらいだ、所謂イケメンという部類だ。そいつはいきなり朝の手を引いて連れ出した。朝は訳も解らずって感じだった。放課後だ。今日は雨。部活も早く終わりだよなって言ってたところだ。

「ちょっと、な、に…」

「ちょっと、来てください。話があるんです」

「話って…」

「来てください」


どう考えたって、……だよな。

「おい、貴浩、あれ」

「あ、まあ、告白ってやつじゃないの?」

「だよな。……思いきった奴だな。三年の教室だぜ?いきなり入って来て、手、引っ張って行くなんて。俺でもしないっつうの」

「あ?誠人はまあ、しないだろ」

余程自信があるんだろ。……朝、どうするんだろ。…困るだろ。急に言われたってな、昨日まで何とも思ってなきゃ…ないだろ。

「しないよ。なあ、帰ろうぜ。それとも、様子、窺いに行くか?」

「バカ、止めとけ、帰ろうぜ」

断られてシュンとなってるのを見ようなんて趣味が悪いってもんだろ。三年なんだから受験だってあるんだ、無理に決まってるだろ、こんな時期に年下君が…。


…驚いた。早速翌日、休み時間に現れるようになったアイツを見て、つき合う事になったんだと解った。別に朝から報告が欲しいとかじゃないけど。……この結果は意外だった。朝はイケメン好きなのか…。

目につくのに…イケメン野郎は休み時間に現れては廊下でだったり、階段の踊り場でだったり、話してるようだった。まあ、最初は友達からってやつだよな。

いつからか、朝の様子がおかしいことに気がついた。クラスにいる時、誰かと話してるところを見なくなった。教室の移動の時だって、前も一人で行動はしてたが、何だか雰囲気が違うような気がした。元気がない。気になった俺は朝に声をかけた。普段の会話じゃない、ただ、大丈夫なのか?て。上手くいってるのか、とか、おかしいのか、とかは聞かなかった。朝が変なのは、言わなくてもそういうのが理由だと思ったからだ。
俺の問いかけに朝は一瞬顔を曇らせた。それから笑った。何が?とだけ言った。……大丈夫じゃないと思った。
だけど、長く話せる時間がなかった。
それに、何かあるなら、アイツにだって話すだろうし、そう思うと…俺は立ち入らない方がいいわけだ。

決定的なシーンを見た。これが理由だ、朝は虐められていた。
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