幼馴染は恋をする

「じゃあな、ここでいいんだろ?」

「あ…、うん、有り難う」

…変なことになった。貴浩君がうちに寄ったら、きっとお父さんは色々と聞くつもりなんだ。
勝手に決めつけて、変なお願いとかしないよね。これからもよろしくとか、何でもないような、実は何か含んだような…。
このまま濁してていいの?…雰囲気だけで読み取られて。私が思ってる事と違うのに。…どうしよう。貴浩君とは普通に友達だし。違うよって言っても何だかこっちが好きを誤魔化してるんだと思われてるのって、どうしたら解ってくれるんだろう…。もう……そんなんじゃない、好きな人は別に居るのって。…それが変な噂が立ってる人の事なのって。言ったら大変なことになっちゃう…。


「どう、したの?」

……え…え?

「あ、あ…こんにちは」

いつから居たんだろう。今日、会えるなんて思わなかった…会えた。…急に視野に入るって…びっくりした。ドキドキ以上にドキドキしちゃう。

「こんにちは?ん?」

…あ、何も…考えてなかったから。言葉が返せない。どうしよう、このままじゃ変な子だと思われちゃう。

「元気ないみたいだけど、大丈夫?」

「あ、えっと、……思春期なんで…色々と、です」

「え?ハハ。…そうか。思春期だもんね。あ、笑っちゃいけないよね。つい懐かしくて、ごめんね?まあ君くらいの時は悩みは多い年齢だったかな~。おじさんからしたらだいぶ昔の事になったけど。悩みは尽きないよね。純粋に勉強だとか、恋、とかね。女の子の方が精神的な成長って早いからね」

…その事です。

「…そうですね。あ、今日、恵和君は?」

「あ、うん。今日は休ませてるんだ。ちょっと、用があってね」

「そうですか…」

そうなんだ。なんか寂しいな。…子供の用ってなんだろう。休んでるって言わなかった。確か、休ませてるって言った。言葉でどうとか、屁理屈かな。それに休むとしたら、こうして一人にさせてるなんてないよね…。

「あ、じゃあ…」

え?帰っちゃう。私が変だから話もろくに出来ないって思わせちゃった。…今日、どうして、ここに?…て思うのも変だけど。私は家の近くだから…て、それもおかしいけど。ここは帰り道で通り道?なのかな。私は偶然にでも会えたらって思って、ちょっと、居るんだけど。

「ん?」

「あ、あ、何でもないです…」

じゃあって言ったのにちゃんと挨拶を返さなかったから…。帰り辛くさせたちゃったんだ。

「あー、恵和の瘡蓋ね、綺麗に取れたよ。ピカピカツルツルになったって、喜んでた。ハハハ。喜んでたっていうのもちょっと違う表現かな。お姉ちゃんに見せるって言ってたよ」

クス…可愛い。

「すぐ治って良かったですね」

なんて言ったらいいか解んない。すり傷だったし治りは早いだろう。たまたま持ってたから傷に貼ってあげたんだけど。

「ちょっとは元気出たかな。じゃあ…」

「あ、すいません。さようなら」

グダグダ話してしまっては困るのに。

「笑顔になれたね。理由は解らないけど、元気出してね?」

「え?あ、はい、有り難うございます」

元気はあるんです、それが複雑だから…ふぅ。緊張した…。恵和君が居ないと何話していいのか…。
ドキドキしたぁ。

「あ、待って?」

え?

「役に立てないかも知れないけど、親に中々言えないことってあるから。俺で良かったら相談にのるよ?」

あ、…でもそれは…。とても難しい。
聞いてもらうってことは告白するってこと。
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