幼馴染は恋をする
「いいよ、何?」

「あ、うん。恵和、何だかもうそんなに嬉しそうでもないの。会って一緒に居ても…持て余してる感じで…最低でも月一回って決めてたけど、そんなに会わなくてもいいのかなって」

「いいのか、それで」

「え?」

「会わなくなったら忘れてしまうかも知れないぞ?麻衣はそれでいいのか」

「あ…会わなくなるのは寂しいけど、もし、いつまでも会ってる事で何か成長の妨げになるんだったら、親のエゴを押しつけるのも良くないのかなって…」

「誰か、できたのか」

「え?そんな…」

「恵和がなんか感じ取ったんじゃないのかな。お母さんの心、ここにあらずって。だからもう帰りたくなったんじゃないのかな…。小さいながらにも成長してる。いつまでも何にも解らない赤ちゃんのままではないからな。次、会ってみて考えよう。それでいいか?いきなり今日で終わりっていうのも違うだろ」

「うん。…休み、決まったら知らせる」

「ああ」

「お父さ~ん、足、見せたい、駄目?」

「ああ?今日はもう無理だろ?遅い時間だから会えないよ。また今度な」

「分かった~」

「足って?」

「あ、うん。転んですり傷ができた。治ったから、その時親切にしてくれた子に見せたいらしいんだ。脛に痕があっただろ?」

「…そうなんだ。気がつかなかった。恵和、私には何も話してくれなかった」

「ん、まあそんなもんだろ。じゃあ解ったら連絡してくれ」

母親ならしばらく会わなかった息子のことをよく観察しそうなもんだけど。…見えてるのにな。そういうの、気がついて話していたら、普段は一緒に居なくても、恵和だってきっと自分のこと好きでいてくれてると思ったはずなんだ。そういうのがなかったってことだ。

「うん…おやすみ。恵和?バイバイ」

「バイバ~イ」

…。

「恵和、こっちに来てちゃんとバイバイしないのか?」

「うん、いいの」

「…何だか、いいらしい」

「うん大丈夫だから、…ごめんね、大輔。私が引き取らなくて。恵和の面倒見るの大変だって解ってるのに」

「麻衣の環境じゃ無理なんだから。話し合った結果だろ」

「うん。…じゃあ」

「ああ、気をつけて帰れよ」

「…うん。おやすみ」

「おやすみ」
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