“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
メアリーさんと選んだドレスを、ダメもとで差し出してみた。

「アリアンヌお嬢様、本日のモーニング・ドレスは、ポピーレッドの明るいドレスにしてみました。いかがですか?」

「そうね。それにするわ」

今日もダメだった。選んだドレスをそのまま籠に入れようとして、ん? と思いとどまる。

「アリアンヌお嬢様、えっと、本日のドレスは、こちらで、よろしいと?」

「そう言っているじゃない。きれいなドレスね」

アリアンヌお嬢様は、喪服ではなく、ドレスを着てくれると。

メアリーさんを振り返ったら、彼女はすでに涙を流していた。私もつられて、泣いてしまう。

「ちょっと、メアリー、なんで泣くのよ!」

「だ、だって、アリアンヌお嬢様が、ド、ドレスを、お召しに、な、なると!」

「エリーまで」

「あああ、あの、う、嬉しくって、つい!」

離れに来てから、ずっとベールで顔を覆い、喪服を纏っていたのだ。それが今日、久しぶりにドレスを着てくれるというのだ。

「エリーさん、アリアンヌお嬢様の気分が変わらないうちに、お召しになっていただきましょう」

「そうですね」

アリアンヌお嬢様に、明るいポピーレッドのドレスを着せる。肌が白いので、ドレスの赤がよく映える。
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