8月8日の約束…

それぞれの想い…

「悠理…。」
紗耶が声を掛けて来た。
横にはさくらもいた。

「何?」
悠理は二人を見た。

━━2019年6月のある日…。
ここは日向高校の悠理のクラス。

紗耶とさくらも同じクラスになった。

悠理が座っている席に、二人が来たのだ。

「最近、元気ないね…。」
今度は、さくらが言った。

「そ、そうかな…。」
と、悠理は答えた。

「うん、ゴールデンウィーク明けたくらいから、落ち込んでる感じがした。」
紗耶も心配そうに言った。

「何かあったの?」
さくらが訊いた。

「べ、別に…。」
と、悠理は言葉を濁した。

「そっか…。」
さくらは微笑すると、
「何かあったら、いつでも相談してね。」
と言った。

「友達なんだから。」
と、紗耶も続いた。

「ありがとう…。」
悠理は二人に言った。

二人は、悠理の席から離れようとした。

「━━ねぇ…。」
悠理は、二人を呼び止めた。

「ん?」
紗耶が振り返った。

「友達同士の会話で、《死にたい》とかって、言った事ある?」
と、悠理は訊いた。

「死にたい?」
今度はさくらが悠理を見た。

「本当に死にたいって意味で?」
紗耶が訊く。

「ううん、冗談みたいな感じで…。」
と、悠理は答えた。

「それなら、毎日のように言ってるよ。」
さくらは紗耶を見て、
「ねぇ。」
と言った。

「うん、テストの点数が悪い時とか《死にたい》を連発してるよ。」
と、紗耶は苦笑した。

「だよ…ね…。」
悠理は呟くように言った。

「それが…どうかしたの?」
と、さくらが訊いた。

「ううん、大丈夫、ありがとう。」
と、悠理は言った。


━━2019年8月7日の夜…。

「ただいま。」
と言って、未央奈は部屋に入って来た。

━━ここは、遥香と未央奈が住んでいるマンションである。

遥香達の両親は、遥香が高校一年生の時に交通事故で亡くなってしまったので、遥香と未央奈の二人暮らしである。

「おかえり。」
と、遥香は言った。

「最近、元気ないね。」
と、未央奈が訊いた。

「べ、別に、そんな事ないけど…。」
と、遥香は答えた。

「悠理ちゃんと喧嘩でもした?」
と、未央奈は遥香を見た。

「え?」
と、遥香も未央奈を見た。

「最近、悠理ちゃんの話をしてくれなくなったから…。」
と、未央奈は心配そうに言った。

「そ、そうかな…。」
遥香は言葉を濁した。

「そういえば…。」
未央奈は思い出したように、
「悠理ちゃん、大阪の大学に行くんでしょ?」
と訊いた。

「え!?」
遥香は、
驚きを隠せなかった。

「知らなかったの?」
と、未央奈も目を丸くした。

「う、うん…。」
遥香は頷くと、
「何でお姉ちゃんは知ってるの?」
と訊いた。

「エステに行った時に、菅井さんから聞いたのよ。」
と、未央奈は答えた。

「そうなんだ…。」
と、遥香は呟くように言った。

━━実は、悠理が遥香に話す前に喧嘩してしまったのだ。

「明日は…。」
未央奈は少し間を置いて、
「遥香達の誕生日だね…。」
と言った。

「!?」
遥香はハッとした。

「お姉ちゃん…。」
遥香は未央奈を見た。

「何?」
未央奈も遥香を見た。

「実はね…」
と、遥香は未央奈を見た…。


━━翌日。

「綾乃ちゃん、行って来ます。」
と、悠理は綾乃に声を掛けた。

「行ってらっしゃい。」
綾乃は悠理の姿を見て、
「似合ってるよ。」
と言った。

悠理は普段は着ない様な、お洒落な服装だった。

「ありがとう。」
悠理は微笑した。


━━パレットタウンの観覧車の前…。

悠理は、朝からずっと待っていた。


━━夕方になり、辺りも暗くなって来た。

「━━やっぱ…ダメだったかなぁ…。」
悠理は諦めて帰ろうとした。

《プルルルル》

突然、悠理の携帯電話が鳴った…。

「!?」
悠理は、携帯電話の着信表示を見てハッとした。

━━遥香の名前が表示されていた。

「もしもし…。」
と、悠理は電話に出た。

『ゆ、悠理ちゃん…。』
と、電話の相手が言った。
━━どうやら、相手は遥香ではないらしい…。

「ど、どちら様…です…か?」
と、悠理は訊いた。

『み、未央奈です…。』
電話の相手は少し間を置いて、
『遥香の姉の…。』
と言った…。
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