8月8日の約束…

遥香の想い…

「お姉ちゃん…。」
遥香は未央奈を見た。

「何?」
未央奈も遥香を見た。

「実はね…」
と、遥香は未央奈を見つめた…。


━━2019年8月7日の夜。

「……。」
未央奈は、黙って遥香を見た。

「悠理に…。」
遥香は少し間を置いて、
「大っ嫌いって言っちゃったの…。」
と、呟くように言った。

「え?」
未央奈は目を丸くして、
「あんなに大好きだったのに?」
と訊いた。

「うん…。」
遥香は未央奈を見つめて、
「ちょっと…悲しく…なっちゃって…。」
と言った。

「……。」
未央奈は、黙って遥香を見た。

「悠理に最初に会ったのは…。」
遥香は思い出に浸るように、
「去年の6月…。」
と言った。

「……。」
未央奈は、黙って頷いた。

「手術を勧められていたけど、嫌がっていた頃で、生きる気力もなかった…。」
と、遥香は言った。

「そんな時に、公園のブランコで悠理を見かけたの…。」
と、遥香は続けた。

「すっごく可愛い子なんだけど、何処か思い詰めている感じだった…。」
と、未央奈を見た。

「……。」
未央奈は黙って頷いた。

「栃木に引越して来たばかりで、前の学校で、何かあったみたいだった…。」

「そうだったの?」
と、未央奈は訊いた。

「うん…。」
遥香は少し間を置いて、
「その時に…思ったの…。」
と言った。

「何を?」
未央奈は訊いた。

「この子を笑顔にしたい…。
この子との思い出を作りたい…。
その為に、生きてみたい…。」
と、遥香は言った。

「……。」
未央奈は、黙って聴いていた。

「長生き出来ない…って知って、人生諦めてから…。」
遥香は少し間を置いて、
「初めて…《生きたい!》って、思えたの…。」
と言った。

「……。」
未央奈の頬を涙が伝った。

「それから、悠理と色々な思い出を作れた…。」
遥香は少し間を置いて、
「でも…。」
と言葉を濁した。

「でも?」
未央奈が訊いた。

「今年の5月に、バイトでミスった悠理が、《死にたい…》って言ったの…。」
遥香の頬を涙が伝った。

「え、でも…それは…。」
と、未央奈が言った。

「うん、分かってる…。
ウチらくらいの子なら、テストの点が悪いとかでも、《死にたい》って、意味もなく遣う事も…。」
と、遥香は未央奈を見た。

「でも、悠理の口から聞いた時…。」
遥香は声を震わせながら、
「よく分からないけど、凄く悲しくなっちゃったの…。」
と言った。

「……。」
未央奈は遥香を見た。

「私に…生きる…希望をくれた…。
悠理から…悠理の口から…。
聞いて…悲しくなって…。」
と、遥香は泣きながら言った。

「悠理に…《大っ嫌い》って…。
きっと辛い思いを…いっぱい…してきた…悠理に…。
私は…《大っ嫌い》って…。
酷い事を言っちゃったの…。
悠理を…傷付けちゃったの…。
私は…最低なの…。」
と、遥香は言った。

「は、遥香…。」
未央奈は遥香を見つめた。

「その後も…悠理は…電話をくれたり…。
メールをくれたりしたけど…。
最低な自分を見せたくなくて…。
私は…何も…出来なかった…。」
と、遥香は泣きながら言った。

「そうだったの…。」
未央奈は呟くように言った。

「……たいよ。」
と、遥香は声を震わせながら呟いた。

「え?」
未央奈には、最初の言葉が聴き取れなかった。

「謝り…たいよ…。
悠理に…悠理に…謝りたいよ…。
もう一度…悠理に…会いたいよ…。」
と、遥香は声を震わせた。

「遥香…。」
未央奈は遥香を見つめた。

「明日…悠理に…謝る…。」
遥香は少し間を置いて、
「許して貰えないと思うけど…謝る…。」
と言った。

「きっと悠理ちゃんなら、許してくれると思うよ…。」
と、未央奈は言った。

「うん…。」
遥香は、泣きながら頷いた。

「明日…パレットタウンに行って来るね。」
と、遥香は言った。

「パレットタウン?」
と、未央奈は訊いた。

「うん、去年のクリスマスに約束したんだ…。
来年の誕生日に、また来ようねって…。
もし悠理が、まだ私の事を…思っていてくれてるなら…。
パレットタウンで会える気がするの…。」
と、遥香は言った。

━━翌日、遥香はパレットタウンへと向かった…。
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