自分より大切なもの





   ガチャっ。






 玄関のカギを開ける。そのカギにはお揃いのキーホルダーが付いていた。二つのキーホルダーを重ねると、一つのハートになる。子供っぽい、そんなありきたりのデザインだがメグミはとても気に入っていた。




 亮介「おー、遅かったな、メグー。」




 そこには、いつもの優しい顔で迎えてくれる大好きな人。どんなに嫌なことがあっても、この男といるとメグミは何だって忘れることができた。




 愛
 「ただいま。」




 男の名前は、杉山 亮介( すぎやま りょうすけ )36歳という若さで、あるIT企業の社長であるが、実際にどんな仕事をしているかは、メグミは知らない。
彼女には興味が無い。その人が今までどんな事をしてきたのか、どんな家庭で育ったのか、どんな女性を好きになったのか……。
今、二人が愛し合って傍に居る……その事実だけで充分。それがメグミの性格だからだ。




そして、亮介には……家庭がある。






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