Hero and Heroine〜覚醒の時〜
この女子は、夏目紅葉(なつめくれは)。前の幼なじみで、幼稚園からずっと一緒にいる。家も近所でお互いの両親も仲がいい。

紅葉は前とは真逆のタイプで、強気で明るく友達も多い。体も丈夫で空手部に入っている。

紅葉は前がいじめられていると、いつも助けにやって来る。いつも前を守っているのだ。

本来なら、前が紅葉を守らなければならないはずなのだが逆なのだ。そのため、前が「お姫様」で紅葉が「王子様」とみんながおもしろがって言ったりする。

「紅葉ちゃん、いつも助けてくれてありがとう」

前がそう言いながら、紅葉が渡してくれた本を抱きしめると、紅葉は優しく前の頭を撫でた。

「私は、いつだってあんたの味方だから!」

強くて優しい紅葉に、前はずっと前から密かに想いを募らせている。



放課後、前は図書室にいた。図書室は静かで、いじめられることもない。前にとって図書室は、天国のような存在だ。

前は体が弱いため、中学校でも高校でも帰宅部だ。仕方がないとわかってはいるが、部活の喧騒を聞くと健康なクラスメートたちが羨ましく感じる。
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